SFミステリー小説:永遠の秘密2〜すれ違う二人



SFミステリー小説:永遠の秘密2〜すれ違う二人

第二章:坂井かなえ(4)

T大学の東棟と西棟を結ぶ通路は全部で二ヶ所ある。

一つはお互いの二階どうしを結ぶ連絡通路である。しかし、この日、田畑太一郎達はもう一つの連絡通路を使って東棟から西棟に行くことになった。

「連絡通路は二階と六階にあるんだけど、今日は六階ので行こうと思ってるから、まずはエレベーターで六階に上ろうか」と、坂井かなえは二人に言って研究室を出た。そして、そのままエレベーター・ホールまで歩いてエレベーターの昇りボタンを押した。

エレベーターはすぐに来た。それに乗り込んで、六階のボタンを押したところで、「あっ」と坂井かなえが言った。二人が坂井かなえの方に視線を移したときにエレベーターのドアが閉まった。

「どうしたんですか?」と田畑太一郎が少し不安そうな声で聞くと、「あ、ごめんごめん。そんな大した問題じゃないの。ドーナツの箱を忘れてきちゃったことを思い出しただけ」と坂井かなえは答えた。

「取りに戻りますか?」と真中しずえが聞いたが、「ま、よく考えると、食べながら座談会ってのもよくないかもね。気が散るかもしれないし。座談会の途中で休憩時間があったら、そのときに取りに戻るよ」と坂井かなえは言った。

そんな会話をしているうちに、エレベーターがすぐに六階に着いた。

「じゃ、私の後をついてきて」と坂井かなえが言って先を歩くと、すぐに連絡通路へと辿りついた。

「ここはちょっと狭いから気をつけてね。」
 「わ、すごい高いですね。ガラス張りだからちょっと怖い。」

「大丈夫よ。景色がいいでしょ?」と、坂井かなえは歩みを止めて連絡通路から見える景色について説明を始めた。

「あそこが高速道路ね。それで、あっちがチャイナタウン。実はね、この下で殺人事件が起きたことがあったの。夕方の時間帯に人が刃物で刺されたんだって。」

「え、ここって、そんなに危険なエリアなんですか?」と、田畑太一郎が少し驚いて聞き返す。

「ううん、大丈夫よ。ここら辺は道路とかがちょっと汚いけど、治安はそんなに悪くないのよ。殺人事件があったのも、もう二十年くらい前のことだし。」

「良かった」とホッとする田畑太一郎の横で、真中しずえが別の質問をする。

「かなえさん、この連絡通路ってよく使うんですか?」
 「うーん、高野さんに会いに行くときくらいにしか使わないかな。段ボールとか置いてあって、ちょっと歩きにくいし。」
 「ですね。それに、なんかちょっと傾いてる感じしません?」

「こっちの建物ってどこも傾いてるよね」と、今度は田畑太一郎が会話に入ってくる。

「そうそう!」と坂井かなえは返事をして、「私が住んでるアパートも傾いてて、丸いお箸をテーブルの上に置くとコロコロと転がるんだよね、こーんな感じで」と、少し大袈裟なそぶりで説明をする。「たしかに!私のところもそんな感じ」と、真中しずえが続く。

「じゃ、傾いてて狭い通路だけど気をつけて歩いてね」と坂井かなえが冗談っぽい口調で二人を笑わせるような感じで言って、再び三人は歩きだして西棟へと足を踏み入れた。

西棟は、坂井かなえの研究室があった東棟とは雰囲気が全然違っていたので、田畑太一郎と真中しずえは最初少し戸惑った。

その様子に気づいた坂井かなえが、「あ、ちょっとびっくりした?私も最初に来たとき少し驚いちゃった。ここ、全体的に廊下が狭いし汚いしでちょっと怖いよね。それに、薄暗いから夜の学校に迷いこんじゃったみたいな感じがしない?」

「あ、いえ、そんなことはないです」と、真中しずえがフォローしたが、その顔には少し引いている表情が見てとれた。

「あはは、そんな無理してフォローしなくていいよ。さっきも言ったけど、こっちの建物は古いんだよね。私が、『自分の留学先があっちの東棟でよかった』って言った理由わかった?」
 「は、はい・・・。同じ大学で同じ場所に隣接してる二つの建物なのに、これだけ雰囲気が違うんですね。でも高野さんの研究室はこっちなんですよね?」
 「そうね。でも、高野さんは別に気にしてないみたい。日本にいたときも、自分が通っていた研究室は古い建物にあったからって言ってたよ。」

「まあ、良い研究ができるかどうかは建物の新しさとは関係ないかもしれないですしね」と、田畑太一郎が会話に加わる。

「ええ、たしかにそうね」と坂井かなえは返事をする。

「でも、こっちの建物って向こうの建物より天井も低いんですか?」と、田畑太一郎が聞くと、「え、そうかな?廊下の幅が狭いのと全体的に照明が暗いから、そう感じるだけかも」と、坂井かなえは答えた。

「あー、そうかもしれませんね」と、田畑太一郎が返事をすると、「ま、とりあえず会議室にいこっか」と言って坂井かなえは再び歩みを進める。歩いている途中で真中しずえが「高野さんってもう会議室で待ってそうですか?」と聞いた。

「えっと、どうかな」と坂井かなえは自分の腕時計を見る。そして、「あー、微妙なところだなー。でも、まずは会議室に行ってみようか。で、いなかったら、私が研究室まで呼びに行くよ」と言った。

***

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