女性研究者座談会
Tweet後編:これからのこと、そして後に続く人へ(更新日:2026年9月27日)
座談会参加者
田中真由美(仮名)|50代前半・アカデミア
現職:アメリカの某大学 Assistant Professor
専門:神経科学
経歴:日本で博士号取得後、ポスドクとして渡米。米国で20年以上研究をしている。
家族構成:独身
佐藤彩香(仮名)|40代前半・インダストリ
現職:某製薬会社 研究者
経歴:日本の大学院卒業後、アメリカの大学でポスドクをしたあとで製薬企業へ転職。
家族構成:夫、子ども2人の4人家族
中村里奈(仮名)|30代後半・アカデミア
現職:アメリカの某大学 Instructor
専門:分子生物学
経歴:博士号取得の2年後にポスドクとして渡米。
家族構成:既婚で子どもはいない
松本恵子(仮名)|20代後半・アカデミア
現職:アメリカの某大学 ポスドク
経歴:博士号取得後、ポスドクとして渡米
家族構成:独身
司会(編集部):前編、中編と、アメリカでの研究生活や、そこで直面する様々な課題についてお話しいただきました。後編では、皆さんの今後の展望や、これから海外での研究を目指す方へのメッセージを伺えればと思います。まず田中さん、今後もアメリカで研究を続けていくご予定でしょうか。
田中(アカデミア):そうですね、正直に言うと、日本に戻るという選択肢はもうほとんど考えていません。20年以上こちらで生活していると、生活基盤もこちらにありますし、今さら一から日本でポジションを探すのも現実的ではないかなと。ただ、親が高齢になってきているので、そこは少し気がかりではありますね。
司会:ご家族との距離については、皆さんそれぞれ思うところがありそうですね。
佐藤(インダストリ):私も似たようなところがあります。子どもたちもこちらで生まれ育っていますし、今さら日本に連れていって生活するのも、子どもたちにとって負担が大きいかなと。ただ、親のことを考えると、正直、複雑な気持ちはありますね。
中村(アカデミア):私たち夫婦は、まさに今、そこで悩んでいるところです。夫がこちらでのキャリアを望んでいるので、私もそれに合わせる形になりそうですが、両親のことを考えると、日本に戻りたい気持ちもゼロではないです。あと、さっきも少し話しましたけど、子どもを持つかどうかは正直まだ答えが出せていませんが、もし子どもが出来たら、アメリカと日本のどちらで育てるかで悩みそうです。こっちは親や親族がいないので夫と二人だけでフルタイムの仕事をしながら子どもを育てられるか心配です。
佐藤:うちは親をアメリカに呼んでしまいました・・・。夫と二人だけで子どもを育てるのは無理でした。でも、今はもう親が高齢になってアメリカに来てもらうのは難しそうなので、何かあったらどうしようと思っています。
中村:うちは、どちらの両親ともそれなりに高齢なので、ヘルプを依頼できるかちょっと微妙です・・・。
司会:佐藤さんは、お子さんの教育や、日米どちらのアイデンティティを大事にするかといったことで、悩まれることはありますか。
佐藤:それはすごくありますね。家では日本語で話すようにしているんですが、子どもたちは学校では英語なので、だんだん英語の方が楽になってきているのがわかります。将来的に日本語をどこまで維持できるか、正直不安はあります。でも、二つの文化を知っているというのは、それはそれで財産になると信じてやっています。
田中:私は子どもがいないので、そのあたりの苦労は想像するしかないんですが、佐藤さんの覚悟、すごいなと思います。
佐藤:覚悟というほどでもないんですけどね(笑)。ただ、こっちで子育てをすると決めた以上は、どちらの文化も大事にしたいなとは思っています。
司会:老後の生活についても、何かお考えはありますか?アメリカに骨を埋めるおつもりなのか、それとも将来的には日本に戻りたいという気持ちもあるのか。
田中:正直、老後のことはまだあまり具体的に考えられていません。ただ、アメリカの医療費や介護の仕組みを考えると、年を取ってからの生活には少し不安があります。日本の親族との関係もありますし、将来的にどうするかは、まだ答えが出ていないですね。
佐藤:うちは、子どもたちがこっちで育っているので、彼らの生活基盤を考えると、今のところは私たちも自然とこっちに残ることになるのかなと思っています。ただ、正直、老後の医療保険や介護のことは、今からちゃんと調べておかないといけないなと思っています。
田中:こちらの医療システムは複雑ですし、担当者によって言うことも違うので(笑)、本当に難しいなと思います。
中村:私たちはまだそこまで具体的には考えていないですけど、田中さんや佐藤さんのお話を聞いて、早めに情報収集しておいた方がいいんだなと感じました。
司会:松本さんは、これからのキャリアについて、何か考えていることはありますか。
松本(アカデミア):私はまだポスドクとして渡米したばかりなので、正直、そんなに先のことは見えていません。ただ、今日皆さんのお話を聞いて、この先どういう道に進むにしても、色々な選択肢があるんだなと思えたので、少し気が楽になりました。
司会:それは良かったです。これから海外を目指す方に向けて、もう少し具体的な準備の面でアドバイスはありますか。語学面、資金面、ビザの手続きなどがやはり外国で住むために難しいポイントでしょうか。
田中:語学に関しては、完璧を目指さなくていいと思います。私も未だに完璧ではないですし(笑)。それより、わからないときに「わからない」と言える勇気の方が大事かなと。
佐藤:私もそう思います。あと、ビザに関しては、早めに情報収集しておくべきだと思います。J-1やH-1B、グリーンカードなど、選択肢によってできることとできないことが結構違うので。弁護士に相談するタイミングも重要です。
田中:特にビザ関係はルールがコロコロと変わりますしね。
中村:私は資金面で苦労しているので、お金のことはきちんと考えておくといいかなと思います。渡米直後は特にお金がかかるので、ある程度の貯金は持っておいた方が安心だと思います。私たち、最初の数ヶ月はカツカツどころかマイナスになってしまったので、親に泣きついて急遽援助してもらってしまいました・・・。
佐藤:お金のことは本当に大変ですよね。ラボのボスにはあんまり相談できないし・・・。
司会:松本さんは、どうでしょうか。
松本:そうですね。私は、日本にいるうちに、こっちで研究している人とできるだけ連絡を取っておくといいのかなと思います。私も渡米前にラボの先輩とやり取りしていたおかげで、来てからの最初のハードルがかなり下がりました。
田中:日本人女性研究者のネットワークに、渡米前から繋がっておくのもおすすめですよね。学会やSNSを通じて、実際にこちらで働いている人に話を聞くと、イメージがかなり具体的になると思います。
佐藤:本当にそうですね。私も、渡米前にオンラインの座談会みたいなものに参加して、色々質問させてもらった記憶があります。今日のこの座談会も、誰かにとってそういう場になれば嬉しいですね。
司会:ありがとうございます。とても具体的で参考になりそうです。では最後に、これから海外での研究を目指す、特に日本人女性の方々に向けて、メッセージをお願いできますか。
田中:そうですね、私からは、あまり気負いすぎなくていいということを伝えたいです。私自身、20年以上経った今でも、うまくいかないことばかりです。でも、うまくいかないなりに、なんとかここまでやってこられました。完璧を求めすぎず、まずは一歩踏み出してみることが大事かなと思います。
佐藤:私は、アカデミアだけがキャリアの正解ではないということを伝えたいです。私自身、アカデミアで挫折を感じた経験がありますが、インダストリという選択肢があったおかげで、今、こちらで研究を続けられています。選択肢は一つじゃないということを知っておいてほしいです。
中村:私はまだ自分自身、答えを探している最中なので、偉そうなことは言えないんですが・・・。ただ、一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談することは大事だなと思います。今日、皆さんに話を聞いてもらえたことで、私自身、少し気持ちが整理できた気がします。
松本:私も、皆さんのように、こちらで力強く研究を続けている先輩方がいることを知れて、すごく心強いです。これから同じように海外を目指す方には、不安になるのは当然のことだと思うので、一人で抱え込まずに、周りのサポートを頼ってほしいなと思います。
司会:皆さま、貴重なお話をありがとうございました。研究の話だけでなく、キャリア、家族、そしてお金の話まで、非常に率直にお話しいただけたのではないかと思います。この座談会が、これから海外で研究を目指す方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。本日は、本当にありがとうございました。
一同:ありがとうございました。

