SFミステリー小説:永遠の秘密2〜すれ違う二人



SFミステリー小説:永遠の秘密2〜すれ違う二人

エピローグ

真中しずえ(まなか・しずえ)は人混みの中、スクランブル交差点を歩いていた。彼女がアメリカから日本に戻ってから、早くも三ヶ月が経過していた。季節は冬となり、街にはクリスマスのイルミネーションが飾られるようになった。

十二月の冷たい風が吹き抜ける中、信号が変わるたびに何百人もの人々が四方八方から交差点の中心へと押し寄せ、そしてまた散っていく。頭上の大型ビジョンからは賑やかなクリスマスソングが流れ、街路樹には無数の白いイルミネーションが瞬いていた。吐く息は白く、真中しずえはコートの襟を立てながら人混みを縫うように歩いていた。

真中しずえが帰国してからも、坂井かなえ(さかい・かなえ)とは何度かメールで連絡を取っていた。しかし、坂井かなえから、ヨーロッパの研究室に移ることになったとの連絡が二か月ほど前に届いたあとは、一度もメールの返信が来なくなってしまった。

田畑太一郎(たばた・たいちろう)とは、今も二週間に一度はメールでのやり取りをしている。しかし、その内容は日常のたわいもない情報交換であった。高野恵美子の失踪に関する話題は、何となくお互いに持ち出しにくい雰囲気になっていた。

スクランブル交差点を歩き終えたとき、真中しずえの目に、『奇跡の魔術師ついに来日!クリスマス・イブに前代未聞のイリュージョンが起こる!!』という広告が飛び込んできた。

「マジックショーか」と、歩みを止めた真中しずえは一人呟く。あのとき、倒れていた高野さんが会議室からいなくなったのは、まるで手品みたいだったな、と真中しずえは思った。そして、小学生のときのクラスメートだった田中洋一(たなか・よういち)のことを自然と思い出した。

田中洋一は手品が好きな小学生だった。彼は優しい性格ではあったが、勉強もスポーツも特にできるわけではなく、クラスでは目立つタイプではなかった。文武両道で、良い意味で何かと目立つ真中しずえとは、接点がないはずの児童だった。

しかし、なぜだか理由はわからないが、真中しずえはそんな彼に惹かれていた。休憩時間や放課後に、彼に手品を見せてもらったり、彼と一緒に何かのアクティビティをするのは、真中しずえにとってとても楽しい時間だった。

しかし、そんな彼は、『夏休み別荘事件』ですっかり変わってしまった。

その事件には、真中しずえだけでなく、田中洋一も巻き込まれていた。しかも、その事件で命を落とした被害者は、田中洋一の親友だった。

事件のあと、田中洋一の顔からは笑顔が消えた。クラスメートとの交わりも避けるようになり、彼が大好きだった手品も学校では見せなくなってしまった。

真中しずえは、そんな彼のことが心配で、何とかして元気づけようとしたかった。しかし、自分の親友であった『空木カンナ(うつぎ・かんな)』もその事件で行方不明になっており、真中しずえ自身も精神的にあまり余裕がなかった。

また、中学受験の勉強のため、真中しずえの毎日は忙しいものになってしまった。そのため、事件のあった夏休み以降は、真中しずえは田中洋一とほとんど話すことがなかった。

そして、私立の中学校に進むことになった真中しずえは、公立の中学校に進学した田中洋一と、小学校を卒業してからは会うことがなかった。何度か手紙や年賀状を送ったことはあったが、一度も返事はこなかった。

「洋一君、今は何をしてるのかな?手品が好きだった彼なら、倒れていた高野さんが会議室からいなくなった理由に気づいたりしたのかな」と、マジックショーの広告を前に、真中しずえは誰に話しかけるでもなく、そう言った。

そのとき、正午の時間を知らせる鐘の音がどこからともなく聞こえてきた。「あ、待ち合わせに遅れちゃう」と言って、真中しずえは再び歩き始めた。

その後ろ姿を、スクランブル交差点に面したファミリーレストランの窓際のボックス席から眺めている人がいた。

「今のが真中しずえだよ。彼女のことはもちろん覚えているよね?彼女、大きくなったけど、昔の面影はあるね。」

そう言ったのは、ボックス席の窓際に座った山川カンナ(やまかわ・かんな)であった。そして、山川カンナの横には、山川聖香が美しい姿勢で静かに座っていた。

「ふふふ、ここに真中しずえも連れてきていれば、ちょっとした同窓会だったね。」

と、山川カンナは目の前に座っている男に話しかけた。しかし、その男は何も返事をしない。

「そんなに怒った顔をしないでほしいな。悲しくなっちゃうよ、久しぶりに会ったのに。それとも、その表情はただ緊張しているだけなのかな?ねぇ、田中君、昔みたいに楽しく会話しようよ。」

山川カンナの目の前にいた男は、真中しずえが六年生のときに同じクラスにいた田中洋一であった。

(小説「永遠の秘密2:すれちがうふたり」終わり)


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