Nature/Scienceのニュース記事から



第44回(2012年11月15日更新)

福島原発からの放射性降下物の影響を今も受け続ける海

東京大学で11月12-13日に行われた学会で、福島原発の周辺の海域における放射能レベルが、徐々に減少していくだろうという当初の予想に反して、実際には変化がなかったという新しいデータが発表された。研究者らは、 未だ続いている原発からの放射能漏れだけでなく河川からの流入水もその原因となっていると考えている。しかし、汚染された沈殿物や海洋生物も関係しているようだ。

現在の汚染の度合はヒトへの重大な健康上のリスクをもたらすものではなさそうだ。しかし、長期的に日本の東海岸沿いの漁業に経済的ダメージを引き起こしている。

2011年3月11日、マグニチュード9の地震が日本の東沖で起きた。これにより巨大な津波が発生し、福島第一原発を襲った。6基の原子炉のうち3基がメルトダウンを起こし、大気中に大量の放射能を放出した。事故後、緊急冷却水が海へ漏れ出し、海も汚染された。

福島原発の事故では、過去最大の量の放射能が海へと放出された。Woods Hole 海洋研究所により発表された新しいモデルでは、16.2ペタベクレル(10の15乗ベクレル)の放射性セシウムが流出し、これと同等の量が大気中へ放出されたと見積もっている。

放射能のほとんどは太平洋へ消散し、極めて低いレベルにまで薄まった。しかし、原発の周囲の海域では、セシウム137のレベルが1000ベクレル付近に保たれたままである。これは、自然バックグラウンドに比べて高い値である、同様に、海底に住む魚の体内の放射性セシウムのレベルも、事故後18ヶ月の間変わらないままである。

学会に参加していた研究者たちは、放射能レベルが下がるのを何かが妨げているとほぼ確信している。東京海洋大学の海洋学者による新しい分析によれば、放射能の海への流入経路は3つある。1つは、地上の放射能が降水により河川へ流れ込み、それが海への流れ出たもの、2つ目は、原発から今も月0.3テラベクレル(10の12乗ベクレル)の放射能が漏れていること、そして3つ目は、海洋沈殿物で、これが汚染の最大の原因なのではないかとこの海洋学者は考えている。

95テラベクレルほどの放射性セシウムが原発付近の海底の砂へと到達した。このセシウムがどのようにして海底に達したのかは不明である。砂そのものによって直接吸収されたのかも知れないし、あるいは、プランクトンなどの微小な海洋生物が放射性セシウムを摂取し、海底に排泄物として放出したのかも知れない。河川からの有機堆積物も汚染の原因かも知れない。

汚染の原因がプランクトンであれ沈殿物であれ、汚染はいずれ食物連鎖に入る。福島近海の海底に住む魚は 日本政府が策定した1キロあたり100ベクレルという基準を上回る放射能を示すものが多くある。例えばアイナメは、1キロあたり25,000ベクレルという高い数値を示すことがわかっている。しかし、汚染の度合いは種によって大きく異なる。タコやイカはほとんど汚染されておらず、レッドスナッパーやシーバスなどの魚は汚染が時折見られるのみである。全体として、魚類や海洋生物の体内のセシウムレベルは今秋わずかに下がり始めたようである。

これは漁業にとっては重要なことである。事故の結果として、2011年には1000億円から2000億円(13億ドルから26億ドル)の損失が出たと推定される。多くの漁場は閉鎖されたままであり、今も続く汚染のために、これらの漁場が安全なのかどうかという基本的な疑問に未だ答えられていない。事故を理解するにはさらに多くの研究が必要である。今後、放射能の海への様々な流入源がより詳しく明らかにされていき、様々な海洋生物に対するその影響もわかってくるだろう。

http://www.nature.com/news/ocean-still-suffering-from-fukushima-fallout-1.11823

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