研究者の声:オピニオン



2018年1月5日更新

学術振興会のルールはブラック企業的論理に基づいているのか?

学術振興会(正式名称は独立行政法人日本学術振興会)は文部科学省所轄の独立行政法人です。日本学術振興会は学術研究の助成や研究者の養成のために資金を支給しており、日本の学術研究を支えてくれる非常に重要な組織です。

日本学術振興会の特別研究員は、まとまった金額の生活費を複数年支給してもらえることもあり、その研究員に選出されるためには非常に高い倍率を勝ち抜かなければなりません。そのため、バイオ研究の業界では、学術振興会の特別研究員に選ばれるかどうかは一種の登竜門的な意味合いもあります。

しかし、日本学術振興会の特別研究員には厳しい「研究専念義務」が課せられています。そして、そこに含まれる矛盾を紹介したツイートが、ここ数日、Twitterで大きな反響を呼んでいます。

学術振興会の「研究専念義務」に孕む矛盾の詳細は、上に紹介したツイートを参照していただければと思いますが、その論点は主に3つあります。

1. 学術振興会は特別研究員との間に雇用関係はないとして、特別研究員に対しては、国民年金や健康保険など通常の労働者が受け取れるであろう社会保険に関する援助をしていない。そのため、特別研究員は自腹でそれら費用を支払うことを強いられている

2. 一方で、学術振興会は「研究専念義務」を特別研究員に課しており、特別研究員は副業を禁止されていることから、特別研究員にとっては社会保険の負担は非常に大きい。

3. 学術振興会が特別研究員に渡すお金は「研究奨励費」という名目であるが、副業禁止などの契約があることから、個人事業主との業務委託契約というよりは、一般的な雇用契約に近い。また、学術振興会は年末調整や源泉徴収を行っているが、源泉徴収票には「研究奨励費」ではなく「給与所得」と記されており、給与所得控除も行われている。

以上のことから、特別研究員のルールへの疑問をツイートをした人は、学術振興会と特別研究員の間には一般的な「雇用関係」が認められるべきであり、それに伴い社会保険等の支援もすべきではないかと問題提起をしています。

また、本ツイートは、このような行為(実質的には雇用関係にあるにも関わらず社会保険負担を逃れる)はブラック企業的論理であり、それを学術振興会が行っていることから日本の基礎研究の将来に強い危機感を覚えると締め括っています。

皆様はどう思いますか?


執筆者:特別研究員に落ちた人


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